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LIVE&EVENT - 2020.01.13

地域の“当たり前”がファンづくりの鍵。東栄町にある体験型のゲストハウス #17 愛知

MotionGalleryとゲストハウス情報マガジンFootPrintsとの共同企画として、47都道府県のゲストハウスを毎月1宿ずつめぐり開催している「ローカルクリエイター交流会 -Guesthouse Caravan-」。第17回は、2019年6月27日(木)愛知県北設楽郡の東栄町にある「体験型ゲストハウスdanon」に伺いました。

日本各地のゲストハウスを毎月めぐり、地域で面白い活動を企む人たちが垣根を越えて出会える場をつくることで、新たな関係性やプロジェクトの芽を育もうとする企画「 ローカルクリエイター交流会 -Guesthouse Caravan-(以下、キャラバン)」。

17カ月目となる今回お邪魔したのは、愛知県の奥三河と称される山間地帯にある人口約3200人の東栄町。築約150年の古民家を活用して営まれる「 体験型ゲストハウスdanon(以下、danon)」を運営するオーナー金城 愛(きんじょう・あい)さんのもとを訪れました。

沖縄県那覇市出身の金城さんが、なぜ「奥三河で暮らすように遊ぶ」というコンセプトを掲げて東栄町でゲストハウスを運営しているのか? さらに中長期滞在に向けて実施しているシェアハウス事業とは?など、イベント内でお話いただいた金城さんのプレゼンを中心に、今回のキャラバンをレポートします。

動画には、danonの館内やイベント風景だけでなく、翌日の町歩きの様子も収めています。

鮎の塩焼きとBBQ付き「ローカルクリエイター交流会」第17回 in 愛知

このキャラバンは、MotionGalleryによる「日本各地で誕生しようとしている熱いプロジェクトにエールを送りたい」という思いと、 FootPrintsによる「ゲストハウスを通じて、暮らしの選択肢が広がるきっかけを届けたい」という思いを組み合わせて実施しています。

キャラバン隊として毎月各地をめぐるのは、FootPrintsを運営する前田 有佳利(dari)と、コンセプト「あなたのまちに、新しい映画体験を」のマイクロシアターサービス popcornに携わる梅本 智子(moko)。MotionGalleryの専属サポーターでもあるdari&mokoが、ゲストハウスの方々にご協力いただき「ローカルクリエイター交流会」を開催しています。

今回は、BBQインストラクターの藤田夫妻のご厚意によりBBQも実施! 東栄町のお酒片手に、じっくり炙った分厚い肉と地元の野菜を存分に味わえる交流会となりました。さらに、全国の鮎から一番の美味しさを競う「第20回清流巡り利き鮎会」で最高位に輝いた東栄町の鮎を塩焼きで堪能。最後は裏庭に流れる川原のそばで舞うホタルの群れをみんなで眺めるなど、この地域の豊かさを体感する夜となりました。

交流会にご参加くださったみんなで記念写真。手はdanonの「D」の形で!(よく見ると「b」もちらほら笑)

2017年、東栄町を流れる振草川の鮎が全国一位の美味しさに選ばれました。

庭にアウトドアセットを構え、前日から手間暇かけて仕込んだBBQを振る舞ってくださりました。

外と中の関わり合いの受け皿。体験型ゲストハウスが生まれた経緯

さて、ここから金城さんのプレゼンを振り返り、活動の原点に触れていきましょう。

沖縄県那覇市出身で旅好きの金城さんが最初に東栄町を訪れたきっかけは、愛知県の移住事業の一環で企画された80日間のお試し移住だったといいます。町の人々の長閑さや自然の豊かさに惹かれ「もっと居たい」との思いが強まり、縁あって2013年4月、地域おこし協力隊として正式に移住しました。

2年間の任期中、少子高齢化で過疎化が進む東栄町において若者が訪れたくなる観光イメージの欠如が課題と感じ、何か解決策はないかと思案していました。そんなある日、普段からお世話になっていた農家の方に教えてもらった体験談が、のちのdanonの誕生に結びついていきます。

金城さん

農家さんから「先日、都会から大学生がファームステイに来てくれたのよ」という話を聞かせてもらいました。一緒に畑でお野菜を収穫して晩ご飯をつくったり、こんにゃく芋からこんにゃくをつくったり、薪ボイラーで湯を沸かしたり。「こんにゃくって芋からできてるんですか!?」とか「はじめて火をくべました!」とかって驚いて喜ぶ大学生の子たちを見て、家族みんな嬉しかったと教えてくれたんです。

自分たちにとっては当たり前のことでもこんなに喜んでくれる人がいるだねって。その話を聞いて、そんな関わり合いが生まれる地域の受け皿をもっとつくれないかなと考えるようになりました。

マイクを持ってプレゼンしているエプロン姿の女性が金城さんです。

そして自分自身が惹かれたように、東栄町の魅力はこの町に暮らす人々であり、暮らしそのものだと改めて感じ、“体験型ゲストハウス”と明記して地域の受け皿となるdanonを開業することにしたのです。

ゲストハウスを介し、地域のファンと地域の人々の笑顔をつくる

約10年間空き家になっていた築150年の古民家を借り、2015年4月25日にdanonをオープン。宿名に関して「この地域の方言です。『そうだのん』とか『元気だのん』とか語尾に付ける響きが可愛くて。地域の人たちの耳に馴染む言葉がいいなという思いもあって、danonにしました」と由来を明かします。

danonの食事は地元の食材を用いた共同調理スタイル。町を楽しんでもらおうと、近隣の温泉施設の半額券も渡しているそう。

なんとも穏やかな時間が流れているdanonの館内。沖縄の弦楽器である三線も置かれています。

金城さん

私、東栄町と出会うまで田舎暮らしにまったく興味がなかったんです。だから私みたいな人でも、東栄町の人や暮らしに触れる機会があれば地域のファンになってもらえるんじゃないかなって思って。そこで「奥三河で暮らすように遊ぶ」ってコンセプトで、暮らしに触れる体験を届けるように心掛けています。

春はタケノコ掘りや田植えの手伝い、夏は鮎釣りや川遊び、秋は栗拾いをして渋皮煮をつくってみたり、冬は約700年続く伝統的なお祭り「花祭り」を一緒に見に行ったり。地域の人々と共に味噌づくりや炭焼き体験をイベント的に開催することもあるといいます。

金城さん

ゲストハウスは地域の人たちと訪れる人たちの関わり合いをつくる入り口や受け皿になることができます。「よし、東栄町に行こう!」と思える観光的なイメージが沸かなくても、ゲストハウスをきっかけに地域のことを知っていくうちにファンになってもらえるかもしれない。今後も、地域の人々と一緒に楽しみながら、danonを新しい関わり合いが生まれる場所にしていきたいと思っています。

東栄町の人々にとっては当たり前でも、都心から訪れる人々にとってはすべてが贅沢な体験です(写真提供:danon)

シェアハウスとマルシェで、より一層深い関わり合いをつくる

地域の人々と訪れる人々の関わり合いをつくる第2ステージとして、2019年6月から中長期滞在向けのシェアハウス「yamatoya」もはじめたのだそう。管理人である金城さんが、共同生活や地域の人々との関係性をサポートしてくれるので安心です。

金城さん

東栄町に関心を示してくださった方が「夏の間1カ月滞在してみようかな」とか「仕事を辞めたからちょっと行ってみようかな」とか、ふらっと住めるような場所があったらいいなと思ったんです。いきなり田舎に住むのは、きっとハードルが高いから。yamatoyaに滞在してもらうことで、リアルな東栄町の暮らしが体験できたり、地域の人たちとのつながりができればと思っています。

さらに、屋外マーケットイベント「だのんマルシェ」も年に2回ほど開催しています。普段からdanonと関わりのある近隣店舗だけでなく、danonに滞在経験のある遠方の作家に出店してもらうこともあるのだとか。商品の売り買いを介して、旅の滞在とはまた一味違ったコミュニケーションを生むことが狙いです。

2019年7月・11月に開催された「だのんマルシェ」のチラシと当日の様子。サウナテントも特設されました(写真提供:danon)

こうして、活動の原点に触れるプレゼンを皮切りにはじまった交流会は、夜更けまで盛り上がりました。

翌日の午前中は希望者を募ってdanon周辺の町歩きを決行。畑仕事をするお母さんや酒屋のお父さんなど、地域の誰もが金城さん率いる町歩きの一行に出会うと「あら、danonさんとこのお客さんかい?」とパッと明るい笑顔で迎えてくれました。その姿から、通算約6年にわたって金城さんが地域の人々と強い信頼関係を築いてきたこと、そして、そんな金城さんが運営するゲストハウスだからこそ、地域の人々とファンの笑顔をつくることができているのだと痛感させられました。

翌日実施した町歩きの様子。清流が日常のそばにある長閑な暮らしが広がっていました。

今回のキャラバンを通じて金城さんが教えてくれたように、ある人にとって“当たり前”でも他の人にとって“当たり前”ではないと認識することで、眠っていた価値を再発掘することができます。そして、それは発掘された側と発掘した側、双方に喜びをもたらす可能性があります。

地域との向き合い方に限らず、思考回路を応用し、友人・家族・クライアントなど普段の関係性の中に潜む“当たり前”を改めて大切にすることで、日常がより豊かになっていくかもしれません。

そして私たちのキャラバンは、今後もまだまだ続きます。
次はきっとあなたのまちへ。

(文/写真/動画: FootPrints 前田 有佳利)


この記事を書いた人

MotionGallery編集部

MotionGallery編集部です。

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