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LIVE&EVENT - 2020.01.15

受け取った縁を、次へとつなぐ場所。柳川の拠点となるゲストハウス #18 福岡

MotionGalleryとゲストハウス情報マガジンFootPrintsとの共同企画として、47都道府県のゲストハウスを毎月1宿ずつめぐり開催している「ローカルクリエイター交流会 -Guesthouse Caravan-」。第18回は、2019年7月18日(木)福岡県柳川市にある「柳川ゲストハウスほりわり」に伺いました。

日本各地のゲストハウスを毎月めぐり、地域で面白い活動を企む人たちが垣根を越えて出会える場をつくることで、新たな関係性やプロジェクトの芽を育もうとする企画「 ローカルクリエイター交流会 -Guesthouse Caravan-(以下、キャラバン)」。

18カ月目となる今回訪れたのは、スタジオジブリがドキュメンタリー映画を制作した唯一の舞台・福岡県柳川市にある「 柳川ゲストハウスほりわり(以下、ほりわり)」です。縁側で日向ぼっこをすれば川下りの船頭の歌声が耳に届く、まちの象徴と言える水路にほど近い古民家を活用した宿です。

実はここ、オーナー島田 侑季(しまだ・ゆき)さんの祖母がかつて暮らした家でした。なぜUターン移住をしてこの場所でゲストハウスをはじめたのか? 強い行動力の源にある思いは何か? それらの活動の原点を明かしてくれた島田さんのプレゼンを中心に、今回のキャラバンをレポートします。

動画には、ほりわりの館内やイベント風景だけでなく、翌日のまち歩きの様子も収めています。

マーケットイベントも同時開催!「ローカルクリエイター交流会」第18回 in 福岡

このキャラバンは、MotionGalleryによる「日本各地で誕生しようとしている熱いプロジェクトにエールを送りたい」という思いと、 FootPrintsによる「ゲストハウスを通じて、暮らしの選択肢が広がるきっかけを届けたい」という思いを組み合わせて実施しています。

キャラバン隊として毎月各地をめぐるのは、FootPrintsを運営する前田 有佳利(dari)と、コンセプト「あなたのまちに、新しい映画体験を」のマイクロシアターサービス popcornに携わる梅本 智子(moko)。MotionGalleryの専属サポーターでもあるdari&mokoが、ゲストハウスの方々にご協力いただき「ローカルクリエイター交流会」を開催しています。

今回は島田さんのご厚意により、マーケットイベントも館内で同時開催していただきました。玄関戸を開けてすぐの場所に広がる共有リビングでは、スペシャルゲストの遠征組として栃木県から「 バターのいとこ」・高知県から「DADA NUTS BUTTER」・広島県から「USHIO CHOCOLATL」が出店!

キッチンでは「 糸島シェアハウス」と「アリアケスイサン」の共同企画として「海苔BAR」が開店し、地元の「島田酒店」によるアルコール販売も行われ、さらに館内を奥へ進むと、柳川市内の人気店「food laboratory Yanagawa」「THE LOCAL STORE」「83coffee」のブースがずらり。それぞれの活動において信念を持って邁進する店主や参加者が勢揃いする、とっても刺激的な会となりました。

マーケットイベントの店主やローカルクリエイター交流会の参加者みんなで撮影した記念写真。

スペシャルゲスト3組のブース。売り手と買い手が1対1で向き合い、商品の背景や特徴について対話して購入するスタイル。

お菓子屋・コーヒー屋・アパレルショップなど、柳川や糸島に拠点を持つ人気店が続々と出店してくださいました。

ゲストハウスを知ったきっかけは、駅前留学ならぬ宿内留学

さて、ここから島田さんのプレゼンを振り返っていきましょう。

柳川市出身の島田さんは大学入学を機に横浜へ。建築学科を卒業後、横浜でハウスメーカーに就職しました。建築士の資格を取得し、最初の5年間は顧客と打合せをし図面を引く日々でしたが「お客様と一緒に住まいの在り方をもっと柔軟に考え、共に楽しみながら提案したい。そのためにもバックグラウンドから物事を理解したい」との思いから現場監督を志願。3年もの間、一回りも二回りも年上の男性たちと肩を並べ、ヘルメットと作業着姿で現場を駆け回っていたそうです。

また、学生の頃から英語を使ったコミュニケーションに興味があり、社会人になって英会話のレッスンに申し込むも、仕事の多忙さに定期的な受講が難しく断念。もっと気軽に英語に触れられる場所はないだろうかと考え、調べた結果たどり着いたのがゲストハウスでした。

島田さん

当時流行っていた「駅前留学」という言葉からアイデアが浮かんで「そうか!ユースホステルみたいなグローバルな宿に行って留学のような体験ができればいいんだ!」と思い付いたんです。調べていくうちに自分が求める環境はゲストハウスと呼ばれる場所にあると知って、通うようになりました。

「ゆっきー」の愛称で親しまれる島田さん。真っ直ぐでパワフルな女性です。

ゲストハウスで海外の人々と接するうちに「ヨーロッパのように隣り合う国同士は、暮らしぶりや建築の構造など多くの共通点を持っている」と気付いた島田さん。「日本は世界から見ると島国だから、オリジナルの文化があって面白いな」と日本の特質を改めて実感し、誇らしく思うようになっていきました。

自分のためではなく、相手のために縁をつなぐ

ゲストハウスを介してさまざまな出会いがあったと話す島田さん。なかでも特に思い出深いものとして、現在、長野県諏訪市で古材と古道具を販売する建築建材のリサイクルショップ「 ReBuilding Center JAPAN(リビセン)」を運営する東野さん夫妻と出会った時のことを思い返します。

島田さん

当時は奥さんである華南子ちゃんが、東京のゲストハウスで女将をしていました。華南子ちゃんとの縁から旦那さんの唯史さんにもお会いしました。休日を使って2人の拠点づくりを手伝うなかで、30歳を目前に将来について少しずつ模索しはじめていた私に対して、華南子ちゃんと唯史さんや彼らを通じて出会った人たちまで自分の経験と縁を惜しみなく注いでくれたんです。お節介でもなく、ただ自然に相手を思い、必要だと感じたから縁をつないでいく。その姿に感動しました。

島田さんは感謝の気持ちで胸がいっぱいになり「縁をつなぐとは、本来こうあるべきなんだ。私も彼らのように縁をつないでいこう」と心に決めたといいます。

島田さんの飾らない人柄のおかげで、会場は終始和やかな雰囲気に包まれていました。

柳川で出会った素敵な人やものを自分なりの視点で紹介したい

ゲストハウス通いを介して日本らしさについて考える機会が増えた島田さんは「日本は小さな地域の集合体。だから日本らしさを大切にするには、各地のお祭りや風習は残したほうがいい」と思うようになりました。そこで、故郷である柳川に帰ろうと考え、かつて正月やお盆になると親族が大勢集って賑わった思い出の祖母の家を継ぎ、自らナリワイをつくれないだろうかと検討しはじめました。

水のまち柳川。時折、川下りの小舟がゆったりと水面を渡っていきます。

ヒントを求めて度々帰省し、まちを歩いて懐かしい人に会ったり、昔から気になっていた場所を訪ねてみたり。このように模索を続けた頃に出会ったのが、今回のマーケットイベントの出店者でもある「THE LOCAL STORE」を運営する松藤さん夫婦でした。

島田さん

当時は奥さんが女性と子ども向けの洋服と雑貨のお店を、旦那さんが古着のお店を営んでいました。他にもコーヒーと雑貨のお店「ムトー商店」が近くにあって、こんな素敵な人たちがいるなら安心して柳川に帰ってこれるって思いました。それと同時に、こうやって出会った柳川の魅力的な人やものを、東京の友人たちに紹介できたらいいなと考えるようになりました。自分が好きな人の好きなものって興味を持ちやすいじゃないですか。人を介すって何かを好きになる近道だから。

そこで、大切な友人をはじめ、日本を訪れる海外の人々や日本を旅する日本人に対して、自身が柳川で紹介したい場所はどこか?と思いを巡らせ「私が紹介したいのは観光スポットではなく、地元の人たちに親しまれる商店街や居酒屋といった地域の暮らしに寄り添った場所なんだ」と気付いた島田さん。

島田さん

そういった場所を紹介しながら、地元の人たちに対しても、他の土地の文化に触れる機会を提供しつつ、柳川や日本のことなど身近なものの大切さを再認識するきっかけまで届けられたらいいなと思いました。そういった思いを全部ひっくるめて実現するにはゲストハウスがぴったりだと感じました。

こうして、島田さんは2017年5月にほりわりをオープンしたのです。

かつての祖母の家を活用したほりわり。共有スペースであるキッチン&リビングでは喫茶バーも開かれています。

寝室は2段ベッドタイプの相部屋と、和式の個室もあります。

島田さん

今も多くの人たちにたくさんの縁をもらっています。そういった縁を自分だけにとどめるんじゃなくて、今後もいろんな人たちにつなげていけたらいいなと思いながら、ほりわりを日々営んでいます。

これまで多くの縁が島田さんのもとに舞い降りたのは偶然ではなく、最初は漠然としながらも対話を通じて言語化し、実現したい世界観を求め続けたからではないでしょうか。縁とは自己顕示欲のためでも一方的に欲するものでもなく、世界観を求めて行動するなかで必然的に付随するものなのでしょう。そのことを島田さんのプレゼンから教えていただいた気がしました。

そして私たちのキャラバンは、今後もまだまだ続きます。
次はきっとあなたのまちへ。

(文/写真/動画: FootPrints 前田 有佳利)


この記事を書いた人

MotionGallery編集部

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